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管理費の滞納と管理組合の対抗手段

・管理費の滞納問題
多数人が共同で居住しているマンションなどでは、管理規約で管理費や修繕積立金などを納付するように決められていますが、どうしても一定の割合で管理費等の支払いができない住戸が出てきます。
この滞納住戸について、滞納が一時的であったりあるいは催促すれば少しづつでも支払ってくれるような住戸であれば、強制手段まではとらなくても済むことがほとんどですが、滞納金額が膨れ上がったり、まったく督促にも応じないような悪質な住戸の場合は、管理組合として対抗手段を検討しなければならないケースもあります。
そこでこの場合の流れをご紹介します。

・基本的には弁護士の依頼が必要に
マンションの滞納問題を解決する場合、督促をいくらしても効果がない場合は、最終的に滞納住戸の区分所有権を競売の方法で強制的に売却して回収することが大半です。
この場合、通常は管理費の請求ないしは特殊な競売の許可をもらうための裁判に加えて、実際の強制執行手続の申立まで行わなければならないので、若干複雑な手続を2つ経なければならず、なかなか一般の方が独自に行うのは難しいです。そのため管理組合が弁護士に依頼して解決を行うことになります。
なおこの手続の詳細や法律的な制度の紹介については、後日別欄で紹介する予定です。

・裁判費用や弁護士費用等の負担について
通常の一般民事事件では弁護士費用は相手方に請求できないとされているのですが、マンション標準管理規約には手続にかかった弁護士費用について相手方に請求できる旨の規定があり、おおよそどのマンションもこれに倣って同じような規定を置いています。
そのため上記の訴訟や競売手続の弁護士費用については、管理規約に基づいて最終的に相手方に対し請求できますが、他方で、満額の完全な請求を認めてもらえるかは裁判所の判断によっても分かれうるため、相手方に弁護士費用全部の請求が認められないリスクもあり、若干管理費会計の持ち出しが生じるケースがあります。
また競売申し立ての強制執行を行う場合、予納金として裁判所に最初にある程度まとまった金額(50万~200万円)を収める必要がありますので、この費用は最終的には売却代金から回収できる見込みではあるものの、管理費会計にとって一時的に負担が生じることになります。
以上から、管理費の滞納問題については、少額の滞納事案で弁護士に手続を依頼すると、管理費会計に逆に負担となるケースもありえます。そのため、強制手段をとるかどうかは、よく弁護士や管理組合で相談したうえで決めたほうがよいでしょう。