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労働審判とは
労働審判は、労働問題に関する紛争について裁判所で解決を行う制度です。
通常の裁判でも労働問題の紛争を扱うことができますが、裁判は時間がかかるため、特に簡易・迅速な手続きとしてこの労働審判制度が特別に規定されています。
この労働審判は簡易・迅速な制度として設計されている関係で、いくつかの点が通常の裁判とは異なります。この相違点を以下紹介します。
・裁判との違い1~期日回数の制限~
1点目が期日回数の制限で、労働審判の期日は原則として3回目までとされており、長々と何回も期日が指定されることはありません。そのため、大体の事件は申立から半年以内には何等かの解決を得ます。
ただし期日回数が制限されているということは、逆に言えば複雑な争点があってもこの期日回数で解決しなければならないため、第1回目までにほとんどの主張・証拠は出しておかなければなりませんし、期日間に出される主張・証拠についても、短い期間で非常に密度の高い応酬を繰り返さなければなりません。そのため、通常の裁判とは異なり逆に弁護士に依頼しておかないと相当不利になりやすいタイプの申立てでもあります。
・裁判との違い2~単独申立のみ可能~
労働審判は簡易な手続として制度設計されているため、申立人は労働者または使用者の1名分の申立しかできず、複数の原告が集団で申し立てるような形の申立は認められていません。
そのため、職場全体が問題となるような大きな事件は労働審判の利用はできず、あくまで個々人の未払い賃金(残業代)請求や、解雇紛争、労働条件紛争、ハラスメント紛争などを対象にすることなります。
ただこれまでの例として、同一職場の数人が残業代請求を一度に起こす場合などは、申し立て自体は個々人別個になりますが、審判期日はいずれも同じ期日に指定したうえで同一の裁判官が担当するなどの方法で運用を工夫して解決してもらえるというケースも例外的にあります。
・裁判との違い3~本人出席が必要~
裁判では弁護士に依頼すれば弁護士が出席して事件を進めてもらえますが、労働審判では直接ご本人から事情を聴く制度となっていますので、本人出席が必須です。
ただ、主張の大筋や大体の部分はあらかじめ弁護士が作成した文書で裁判所には伝わっていますので、聞かれることは細かい実際の事実関係を中心に尋ねられることが多いです。
そうはいっても、出席が必須ということは逆に様々な準備が必要であるため、訴訟に比べて当事者ご本人の負担は大きいものとなります。
・裁判との違い4~付加金がつかない~
残業代請求などの未払い賃金を請求するタイプの事件では、労働基準法上、「付加金」といって、会社にとってペナルティとなる上乗せ賃金(最大で未払い額と同額)を請求できるとしています。
ただしこれは裁判で請求する時にのみ認められているもので、労働審判ではこの付加金請求は認められていませんから労働審判を選択すると損をしたような気分になります。
ただ、裁判を選択しても判決ではなくて和解で終結した場合は付加金は認められませんし、付加金ありの判決を獲ったとしても、相手が控訴して控訴審で未払い賃金分を弁済した場合は付加金の請求権は消滅しますので、裁判になったから確実に付加金をもらえるというわけでもありません。そのため、現実の実務では付加金請求は難しいものとされていますので、付加金の有無は手続選択の重要な要素にはならないことになります。
以上が裁判と労働審判との主な違いになります。
どちらの手続きであっても、有利な解決をするためには弁護士を選任することが必要なタイプの申立てになりますので、どの手続を選択するかは弁護士と相談のうえ、検討していただけたらと思います。
