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シルバー人材センターでの仕事と労災保険
・シルバー人材センターとは
シルバー人材センターとは、健康で働く意思と能力を持ったおおむね60歳以上の方を対象に仕事の紹介をしている場所で、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」に規定された団体です。
このシルバー人材センターでの仕事の紹介は、高齢の方に生きがいのための仕事を紹介するという建前であるため、雇用主から厳格な指揮を受ける雇用契約という形式ではなく、事務委任・請負という形式で仕事の紹介を受けることになります。
作業内容は主に草刈りや清掃などを対象としており、比較的融通の利く緩やかな仕事というイメージではあるのですが、次に述べる通り、雇用契約ではないために受ける不利益も存在します。
・労災保険が適用されない
高齢者の方こそ、若い健康な方とは異なり何かしらの持病を抱えていたり、若い方のようにきびきび動けるわけではない一方、シルバー人材センターで紹介される作業は大部分が肉体を用いる労働であるため、ぎっくり腰や転倒などどうしても事故や怪我の割合は増える可能性があります。
このような事故や怪我が起きた場合、労働契約であれば、労災保険が下りて給付を受けられたり、雇用主から傷害手当やあるいは雇用主に労災発生の原因がある場合には慰謝料も含めた相当な給付を得ることができるのですが、シルバー人材センターの仕事は労働契約ではないため、労災保険の給付の対象とはなりません(なお後述する派遣事業を除く)。
そのためシルバー人材センターはこのような事故に備えてシルバー保険という、身体傷害保険と賠償責任保険を複合させた保険に加入しているのですが、この保険で受け取れる給付は労災保険に比して限度額や給付額の点で非常に見劣りがするもので、軽微な事故でない場合には損を被る可能性が非常に高いものになります。
・シルバー人材センターならではの利点も
上記のように、シルバー人材センターでの仕事は労働契約ではないため、いわゆる独立したフリーランスの立場として仕事をすることになりますから、どうしてもその保護は希薄になりがちです。ただし通常の労働が難しい高齢になったとしても仕事をできるという選択が存在すること自体はたしかなメリットとも言えますので、悪いことばかりではありません。
なかなか高齢の方を通常採用する企業が少ない中でも、意欲ある高齢の方が活躍できる場所を紹介していることについては確かな意義があります。
・派遣型事業もあり
上記の草刈りや清掃などの単純作業の紹介とは異なり、シルバー人材センターには派遣事業も存在します。具体的には、派遣先から直接指揮命令を受けて作業しなければならないケースや、派遣先の従業員と混在して共同で作業を行うようなケースでは、単純な事務の委任契約と扱うことは難しいため、労働契約を締結して正式に派遣という形で高齢者を派遣先に紹介します。
ケースとしてはあまり多くはありませんが、このような派遣型事業の場合は通常の労働契約になりますので、労災保険の適用対象となります。
