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悪質なクレームの対応法

・概要
一般消費者等を対象にして事業をされている場合、自らが販売した商品や提供したサービスについてのクレームを受けることがあります。
このクレームについて、自分が提供したものが一般的に要求される水準すら満たしておらず、自分が債務不履行状態であると評価されるようなものであれば、それは改めることが必要ですが、今回ここで取り上げたいのは、そういった事情もないのに、義務のない返金を求められたり、追加のサービスを提供するよう要求されたり、あるいは脅迫行為を受けたりするようなケースです。
ほかにも最近のケースとして、悪意の口コミや無断で写真撮影されたものがSNSにあげられたりするなど様々な嫌がらせが行われることがあります。これらについては一般的にカスタマーハラスメントと呼ばれる行為ですが、その中でも本欄では悪質なクレームの対応策について紹介します。

・対応策
(1)最初に考えること
クレームをどう対処するかは大前提として、個々の経営判断事項になります。例えば、理不尽に思えるクレームでも、きちんと応えることでよき応援者になってくれるかもしれませんから、なるべく真摯に対応するという選択がある一方、クレームに真摯に対応するばかりでは社員が精神的に疲弊してしまい業務効率が落ちたり、逆に事業にとって損害になるということもありえます。
そのため完全な正解はないのですが、対抗する手段をとると決めた時には次の視点がまず重要です。
(2)そもそもこちらが債務不履行にはあたらないか
まずはクレームが正当なものか不当なものかの振り分けが重要です。すごく簡単な例になりますが、顧客が「みそラーメン」の注文をだしたのに、「しょうゆラーメン」を提供したら、それは注文内容に従った商品を提供していないので、こちらの債務不履行があったものとして、顧客のクレームは正当なものになります。しかし、こちらとしては「みそラーメン」を提供したのに、「まずいから返金しろ」というのは、「みそラーメン」を提供している以上、債務不履行ではないので不当なクレームということになります。
(3)不当なクレームであった場合の対応について
不当なクレームであった場合にまずすべきことは、こちらとしては相手の要求に応じる義務がないことをはっきりと丁寧に伝えることが重要です。
そのうえで、それでも相手が要求をやめない場合には、刑法上、強要罪や業務妨害罪が成立しうるケースがありますので、警察に相談することを前提とした証拠集めが重要となります。
具体的にはクレームのやりとりの中で相手の個人情報(電話番号・住所・氏名)をきちんと聞くほか、発言を録音することが重要と考えます(これらはあとで刑事告訴するときの重要な証拠となります)。
証拠が集まった段階で、これ以上は警察に相談する旨を相手方に伝えると、たいていはそれで引き下がるケースのほうが多いです。
(4)弁護士に依頼が必要なケース
上記のとおり、警察に相談することを伝えても引き下がらない相手の場合は、刑事告訴を見据えて動かなければならないケースがあります。特に実際に明確な業務妨害にまで発展しているようなケースでは、毅然とした対応が必要になるでしょう。
この場合、実際の刑事告訴の手続については、専門家である弁護士に依頼したほうが警察がきちんと動いてくれる可能性が高いので、弁護士に依頼すべき事案となります。
ただ実際には刑事告訴まではせずとも、弁護士からの正式な警告の通知を出すだけでも効果がある場合がありますので、困っている場合には弁護士に依頼することを検討してみてください。