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法人の倒産処理方法の選択

・はじめに
法人について再建を見越して負債の圧縮を図ったり、あるいは倒産という形で清算する場合に、どのような手続を選択するかは問題になります。
法人の倒産は再建型の手続を清算型の手続がありますが、これについて簡単にご紹介します。

・再建型の倒産処理方法(民事再生と会社更生)
法人について今後の再建を目的に債務の圧縮を図る方法としては、民事再生と会社更生の制度がそれぞれあります。この制度はいずれも債権者の同意を一定数得る見込みがある場合に債務を圧縮して整理するという点では共通しますが、一番大きな違いは手続き上、経営陣が退陣するかしないかといった点にあります。
民事再生の場合は現経営陣は原則として残ったまま会社の再建を進めていくことができます。ただ、この手続の問題点は、倒産の原因が外部環境の変化や景況感の悪化ではなく、専ら現経営陣の失策にあると債権者が強く思っている場合にはなかなか債権者の同意を得て現経営陣が残ったままの再建を進めることができない可能性がある点です。同意が得られなそうな場合には、経営陣は身を引いて、財産の管理権を管財人に委ねる会社更生法の手続が選択されることになります。
ただ、民事再生の場合も大体のケースで株式を100%減資して新しいスポンサーを募って再建することになりますので、新しい出資者が現経営陣の刷新を図る可能性もありますし、いずれにせよこういった手続については現経営陣のおかれる立場は厳しいものがあります。それでも申立てを行うのは、従業員や利害関係人のことを考えて、会社が破産して完全に消滅する前になんとか不幸を少しでも減らすという良心的な判断があると思います。

・清算型の倒産処理方法(破産と特別清算)
上記とは異なり、今後再建の見込みがない場合には会社を清算して閉じるという形で清算型の手続が選択されることになります(例外として再建の見込みがあっても事業譲渡を前提に破産の申し立てをするケースもあります)。
特に中小企業の場合で経営者が会社の債務を連帯保証している場合に、経営者個人の連帯保証債務の免責のために同時に法人の破産手続を選択するというケースが多くみられます。
清算型の手続きとしては破産と特別清算の2種類があります。ただし、特別清算の場合は、手続を進めるにあたり債権者の3分の2の同意が必要になりますので、なかなかハードルが高く、体感あまり採用されていないと感じます(破産では債権者の同意は不要です)。
そのため清算型の手続を進める場合は、基本的には破産という手続を選択して法人の清算を進めることになります。

・実際の選択をどうするか
以上の説明が教科書的な回答にはなりますが、実際は会社が倒産寸前になると資金繰りに窮して未払いが生じるため、債権者が会社の重要資産を差し押さえたり、あるいは従業員が退職して会社の運営が困難になることがあります。
そのため倒産処理を選択できるのは比較的会社の経営にまだ猶予がある時の話であり、通常の依頼は破綻ぎりぎりの時点での相談が多いため、原則は破産だが、何か生き残る道はないか(事業譲渡して会社の事業を移せるかや、新しいスポンサーを探して民事再生に切り替えられるか)を急いで探ることになります。また先ほども触れましたが、代表者が会社の債務を連帯保証している場合は、破産をベースに手続を検討することも多いです。
そのためいくつもの要素を検討しながら倒産手続を選択することになりますので、実際は弁護士と協議をしながら手続を選択することになります。