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離婚時のペアローン物件の扱い
・ペアローン物件とは
近時共働き世帯が増加したことや、不動産価格の高騰によりなかなか一人の稼ぎでは不動産物件を購入することが難しいという理由から、ペアローンという夫婦それぞれが住宅ローンを借りて合計の金額で一つの物件を購入することがあります。これには連帯債務の形式をとるものや連帯保証の形式をとるものなどがありますが、いずれにせよ二人の力を合わせてローンを返済していくことを前提とした商品設計となっています。
このペアローンに問題が生じるのは、離婚などで共同してローンの返済を続けることが困難となった場合であり、この時の物件の扱いについてどのような対処方法があるかご紹介します。
・前提として放置は危険であること
ペアローン方式での借り入れの場合、たとえ片方が離婚などで家をでたとしても、それぞれの債務は離婚によって影響を受けることはありません。そのため、共同でのローンの返済ができずに返済を滞ることになると、物件の差し押さえを受けることになり、そのまま何もしないと競売の方式で強制的に物件を売却されてしまいます。
この競売方式での売却の場合、通常の不動産流通ルートとは異なる形での売却のため、大体時価の7~8割程度の価格でしか売却できず、高額物件である不動産の場合、少なくとも数百万円単位の大きな損を被ります。そのため、放置したままでは損害を受けることになるため、離婚時は必ずこの物件の処遇を決める必要がでてきます。
・方式1 売却して清算する
まず一番多く選択されているタイプがこの売却して清算する方式であり、夫婦(元夫婦)共同でローン会社・銀行に事前に相談をしたうえで、物件の売却を不動産仲介会社に依頼し、市場で売却する方法です(なお、不動産仲介会社に先に相談を持ち掛ければ仲介会社がローン会社に話をつけてくれるケースもあります)。
この場合、既存のローンと各種費用を合算した金額よりも高値で物件の売却に成功した場合は、残余金をそれぞれに分けることになります。分け方は2分の1ずつのケースもあれば、どちらかが特有財産などから頭金を多く出したケースなどではその調整を行うケースもあります。この清算方法については話し合いで決める必要があります(当事者同士でこの話し合いができないケースでは弁護士を通じた交渉や調停・裁判などで解決するケースもあります)。
また、売却価格が既存のローンと各種費用を合算した金額よりも低い、いわゆるオーバーローンの場合は、残った負債についてそれぞれで別個で弁済を続けていくことになります。
ただ、このオーバーローンでの売却については、負債の残り具合によっては金融機関がそもそも売却を許可しないケースもありますので、事前に調整が必要となります。
・方式2 売却せず居住を継続する
幸いなケースで夫婦の片方の所得が高いケースや、資力がある場合、片方のローンを引き取る形で単独での所有・居住を続けることができるケースがあります。
具体的には、夫婦のうちの片方の債務部分を一括で全額弁済してしまったり、あるいは債務引き受けや新たに単独でローンを組みなおすなどして、ペアローンを解消することができます。
この債務引き受けや、単独でローンを組むケースでは、残債務について一人で今後弁済できる収入・資力があるかの信用力チェックを受けることになります。晴れてこの審査に合格すれば、今後、その物件を売却せずに済むことになります。
ただし登記上、このようなローンの扱いの変更については担保権の欄である乙欄をいじるだけのケースもありますので、片方が今後ローンを返済することになった時は相手の持ち分を財産分与で受け取るという形式での所有権の移転登記手続(登記上は甲欄の手続になります)を忘れずに行うようにしたほうが望ましいです。
・まとめ
上記いずれの場合も最後は双方の協力がないとペアローン物件の処遇を決められないので、離婚する際には、この点についての協議が避けては通れない問題になります。
もしも話し合いが困難なケースなどは弁護士を通じた解決をすることもできますので、必要な方はぜひご相談いただければと思います。
