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養育費をめぐる問題

(下記の説明は現行法によるものであり、近時民法が改正され法定養育費などの制度が新設されました。そのため今後は新しい制度に従いますので、新制度施行後に改めて記事を執筆する予定です)

・養育費について
離婚して子と離れることになった時、養育している側の親に対して、養育費という子の成長のための生活費を支払う義務があります。
子が成長するために多額の費用がかかる昨今では、この養育費は子供にとって非常に有意義なものですが、支払いをめぐってよくトラブルになることもありますので、養育費をめぐる問題についてご紹介します。

・養育費の額の決め方について
養育費の金額については子を養育する側の親と、離れて生活している側の親のそれぞれの収入状況を勘案して決定します。
現在最高裁のホームページに養育費の金額の目安の一覧表について掲載されておりますので、この表を見ながら養育費の金額を決定することになります。
なお令和元年に新しい基準の算定表が公開されており、それまでに参考とされていた養育費の旧算定表よりも全体的に金額が増えています。これから新しく養育費の金額を決定する場合は新しい基準の算定表を参考にすることになりますので、この点は注意が必要です。

・問題1 養育費の金額の争いについて
養育費の金額については親双方の年収を基準に上記の算定表に従って決すると記載しましたが、たとえば一時的に失業中であるとか、今後収入の変動があると見込まれるときに、どの年収を参考にして金額を決定したらよいかが問題になることがあります。
基本的には現時点での年収を基準に計算する養育費ですが、ある程度の事情変動は加味されるため、よく離婚調停などで争点となるところでもあります。
これについては個別の事情ごとに裁判官が判断して決することになりますが、傾向としてはこれから現実的・実際的に得ることが可能な収入を基準に決定されることが多いように感じます。
また逆に、養育費の金額がすでに決定されて支払っていたものの、事情の変動で年収や子の人数(再婚で子が増えたとき)に変更があった時は、養育費の額の変更を調停・審判で求めることができます。
つまり養育費の金額については実情に応じて常に変動しうる性質のものですので注意が必要です。

・問題2 養育費の不払いについて
養育費でよく問題になる点の2点目が、養育費の不払いになります。
実際、ほとんどの親が相手から養育費を受け取れていないという調査もでています。これは養育費の請求にあたっては心理的ハードル・手続的ハードル・経済的ハードルが存在することが要因であると考えられます。
まず心理的ハードルとは、家庭内暴力などで子を連れて離婚した場合に相手方に養育費を請求すると報復をうけるのではないかと恐れることや、あるいはもう二度と相手とかかわりあいたくないなどの理由で養育費の請求を断念する心理的な負担のことです。実際、養育費を支払うと代わりに子供に会いたいという要求が強くでてくることなどもあり、請求を躊躇する親も多いケースがあるように思います(子供にとっては可能な限りもう片方の親と会うことは重要と思いますが、それは理想的な関係ではあるのですが他方で暴力をふるうケースなどもあり難しいところです)。
また手続的ハードルとして、請求方法の困難さがあります。
相手が自主的に養育費を支払ってこないときに法的措置で養育費を請求する場合は事前に離婚協議書や離婚公正証書や調停・審判で養育費の金額が確定していることが必要なため、離婚後に初めて養育費を請求するようなケースでは、あらためて調停・審判や公正証書作成のようなきちんと厳格な手続を踏んでからでないと養育費を請求できません。
また、強制執行をするためにもハードルがあり、当事者間で作成した離婚協議書だけでは強制執行まではできませんので、新たに債務名義と呼ばれる強制執行をするために必要な書類の作成が必要になります。そのため、生活に困っているから養育費を請求したいのに、この請求手続が弁護士を依頼する費用などで出費が必要になるため、手続的に請求が難しいケースがあります。
最後に経済的ハードルですが、養育費は親双方の年収を基準に金額を決定しますので、相手方の収入状況が芳しくない場合は、ほとんど請求できないという実情があります。
これらの点も相まって、養育費を請求するためにはいくつものハードルを乗り越えなければなりません。そのため、実際のところは養育費をきちんと請求できているケースというのは、恵まれているほうのケースであると考えられますので、離婚を考えられている場合は、このような事情も加味して検討していただけばと思います。